CT検査の被ばくは大丈夫?診療放射線技師が分かりやすく解説

「CT検査しましょうか」と言われたとき、「CTって放射線大丈夫なの?」「何将来がんになるのでは?」と不安になった方も多いのではないでしょうか。検査が必要だと分かっていても、被ばくの影響が見えないぶん、怖く感じるのは自然なことです。
私は診療放射線技師として23年以上勤務し、これまで約5万件以上のCT検査に携わってきました。
この記事では、被ばくによるリスクと、検査で得られる利益の両方をお伝えします。放射線量がどのように管理されているのか、検査を受けて大丈夫なのか、妊娠中はどう考えるのかを、患者さんの立場に立って分かりやすく解説します。

CT検査の被ばくは「ゼロではない」それでも必要な医療である

被ばく=危険 じゃない理由

CT検査ではX線を使用するため、放射線被ばくは避けられません。ただし、「被ばくがあるから危険」「放射線を使う検査は受けない方がよい」と単純に割り切るものではありません。

医療で放射線を使用する場合は、検査によって得られる利益が被ばくのリスクを上回るかを考えます。これを放射線防護では「正当化」と呼びます。患者さんに一律の線量限度を設けるのではなく、本当に必要な検査かを判断し、必要な場合は診断できる画質を保ちながら線量をできる限り抑えることが基本です。

画像診断で得られる利益とは

CT検査の大きな利点は、体の内部を短時間で詳しく確認できることです。レントゲン写真では分かりにくい臓器や血管、出血、炎症、腫瘍などを断面画像として観察でき、病気の発見だけでなく、広がりの確認や治療方針の決定にも役立ちます。

例えば、救急医療では脳出血や大動脈解離、内臓損傷など、一刻も早い診断が必要な場面があります。このような場合、被ばくを避けることよりも、CTで原因を見つけて治療につなげることが患者さんの命を救うことになります。

大動脈解離

医師がCT検査を選択する理由

医師は、症状や診察結果、血液検査、これまでの画像などを踏まえ、CT検査が診断や治療に必要かを判断します。つまり、CTは「念のため何となく撮る」のではなく、検査によって得られる情報が患者さんの診療に役立つと考えられた場合に選択されます。

もちろん、被ばくがゼロになるわけではありません。だからこそ医療現場では、検査の必要性を確認したうえで、診断に必要な画質を確保しながら患者さんの線量を合理的に低くする「最適化」が求められています。

CT検査で大切なのは、被ばくの有無だけで判断することではありません。検査を受けることで得られる利益と、被ばくによるリスクを比較して考える。医師はそれを天秤にかけたうえでCT検査を提案しています。

CT検査の放射線量はどのように管理されている?

CT検査では、放射線量を下げれば下げるほど安全になる、という単純なものではありません。X線量を必要以上に減らすと画像のノイズが増え、小さな病変や出血などが見えにくくなる可能性があるからです。

そのため医療現場では、診断に必要な画質を保ちながら、患者さんの被ばくをできる限り抑えることを目標にしています。放射線量は、国が定めた一律の数値だけで管理するのではなく、診断参考レベル、CT装置の自動調整機能、診療放射線技師の判断を組み合わせて管理されています。

診断参考レベル(DRLs)とは

CT検査の放射線量を見直すための目安として使われているのが、診断参考レベル(Diagnostic Reference Levels:DRLs)です。

日本では、国内の医療機関から集めた線量データをもとに、頭部CT、胸部CT、腹部CTなど、検査内容ごとの参考値が設定されています。現在は、2025年に公表された「Japan DRLs 2025」が最新の基準です。

一般的なCT検査の線量がDRLsより高い場合に、撮影条件や検査方法を見直すための目安です。患者さんの体格や病状、検査目的によっては、DRLsを上回る線量が必要になることもあります。DRLsは、施設全体の検査を最適化するために用いられる指標です。

放射線技師は線量と患者さんの状態を確認しながら撮影している

現在のCT装置には、患者さんの体格や撮影部位に応じてX線量を自動的に調整する自動露出制御(AEC)が搭載されています。

撮影前の位置決め画像から患者さんの体格や身体の厚みを読み取り、撮影する部位に合わせて管電流を変化させる仕組みです。肩や骨盤などX線が通りにくい部分では必要な線量を確保し、肺野など比較的X線が通りやすい部分では線量を抑えます。

ただし、AECが搭載されているからといって、装置にすべて任せて撮影しているわけではありません。

診療放射線技師は、検査目的、患者さんの体格、撮影部位、必要とされる画質を考慮し、基準となる画質設定や管電圧、撮影範囲などを調整します。それだけではありません、患者さんの呼吸状況や痛みの強さなども考え撮影スピードと画質を調整します。

撮影後は、CTDIvolやDLPと呼ばれる線量情報と実際の画像を確認し、診断に必要な画質が得られているか、線量が過剰になっていないかを評価します。医療機関には、CTを含む放射線診療について線量の記録や管理、安全利用のための体制整備が求められています。

画質と被ばくのバランスが重要

患者さんの被ばくを減らすことは重要です。しかし、線量を下げることだけを優先し、病気が見えない画像になってしまえば、CT検査を行う意味がありません。

反対に、必要以上に滑らかできれいな画像を求めて、放射線量を上げすぎることも避ける必要があります。

診療放射線技師に求められるのは、病変を見つけられる画質と、患者さんが受ける被ばくのバランスを取ることです。患者さんの体格や検査目的に応じて瞬時に条件を調整します。

CT検査の線量管理は、機械が自動的に行って終わりではありません。装置による自動調整、診療放射線技師による撮影条件の設定、撮影後の線量と画像の確認を重ねることで、診断に必要な情報を保ちながら不要な被ばくを最小限に減らす努力をしています。

妊娠中・妊娠の可能性がある場合は必ず相談を

妊娠中や妊娠の可能性がある場合、「CT検査を受けても赤ちゃんは大丈夫なの?」と不安になる方は少なくありません。

実際には、すべてのCT検査が胎児へ大きな影響を与えるわけではありません。

重要なのは、検査する部位と胎児が受ける被ばく線量です。そのため、妊娠中や妊娠の可能性がある場合は、検査前に必ず医師や診療放射線技師へ伝えることが大切です。


胎児への影響が問題になる理由

細胞分裂が盛んな組織ほど放射線の影響を受けやすい特徴があります。

妊娠初期の胎児は急速に発育しているため、放射線の影響を最も慎重に考える必要があります。

ただし、影響の程度は胎児が実際にどれだけ放射線を受けたかによって大きく異なります。


しきい値がある確定的影響とは

胎児への影響には、大きく分けて

  • 確定的影響
  • 確率的影響

の2つがあります。

確定的影響とは、ある一定以上の放射線量(しきい値)を超えた場合に起こる影響です。

代表的なものとして

  • 流産
  • 発育障害
  • 奇形
  • 知的発達への影響

などがあります。

ICRP(国際放射線防護委員会)胎児線量が100 mGy未満の場合、重篤な組織反応(確定的影響)が生じる可能性は低く、放射線リスクだけを理由に妊娠中断を検討する必要はないとしています。

骨盤部が撮影範囲に含まれるCT検査では、胎児が受ける線量は一般的に10〜25 mGy程度が目安です。ただし、妊娠週数、母体の体格、装置、撮影範囲、撮影条件、撮影回数によって大きく変わります。単純CTと造影CTを複数相撮影した場合には、線量が増える可能性があります。

検査部位によって影響は大きく異なる

妊娠中でも、すべてのCT検査で胎児が直接放射線を受けるわけではありません。

例えば

  • 頭部CT
  • 胸部CT
  • 四肢CT

では、胎児は照射範囲の外にあるため、受ける放射線量は非常に少なくなります。
その上、放射線技師が妊娠を分かっている場合、検査部位にかからないよう鉛プロテクターを着けてもらったりして赤ちゃんへの被ばくが最小限になるようにします。

一方で

  • 腹部CT
  • 骨盤CT

では胎児が照射範囲に含まれるため、より慎重な判断が必要です。

そのため医師は、MRIや超音波検査で代用できないかも含めて検査方法を検討します。

まずは検査前に必ず妊娠の可能性を伝える

妊娠中、または妊娠の可能性がある場合は、遠慮せず医師や診療放射線技師へ伝えてください。

  • 本当にCTが必要か
  • MRIや超音波へ変更できないか
  • 撮影範囲を狭くできないか
  • 被ばくを最小限にできないか

などを総合的に判断します。

私もCT撮影前には、妊娠の可能性について患者さんへ確認しています。これは「検査を断るため」ではなく、「患者さんとお腹の赤ちゃんにとって最も安全な方法を一緒に考えるため」です。妊娠しているかもしれないと思ったら、遠慮せずにお伝えください。

まとめ|
CT検査は必要性を見極め、被ばくをできる限り抑えて行われている

CT検査では放射線を使用するため、被ばくがゼロになることはありません。しかし、だからといって「危険だから受けない方がよい」と単純に判断できるものでもありません。病気やけがを早く発見し、適切な治療につなげるために、CT検査が必要となる場面は多くあります。

CT検査も含め放射線を使用する検査では、診断参考レベル(DRLs)を参考にしながら、自動露出制御(AEC)などの装置機能を活用し、診療放射線技師が患者さんの体格や検査目的に合わせて撮影条件を調整しています。大切なのは、放射線量をただ下げることではなく、病変を見つけられる画質を保ちながら、不要な被ばくを減らすことです。

妊娠中や妊娠の可能性がある場合も、自己判断で検査を断るのではなく、事前に医師や診療放射線技師へ伝えてください。検査部位や緊急性、代替検査の有無を踏まえて、より適切な方法が検討されます。

CT検査について不安があるときは、遠慮せず聞いてください。検査の目的や放射線量について我々診療放射線技師と一緒に確認しましょう。被ばくを必要以上に恐れず、軽視もしないことが、安心して必要な検査を受けるための第一歩です。